私の上司はご近所さん

星出版の取材陣とともに、見学ルートと製造過程を回る。撮影と質疑応答を経て、工場取材が無事に終わった。車で工場に訪れた山崎さんとカメラマンの方を見送るために、駐車場まで移動する。

「山崎さん、今日はありがとうございました。これ、お土産です。新商品の夏ショコラも入っているので編集部のみなさんと食べてください」

あらかじめ用意しておいた夏ショコラと試食品が入った紙袋を山崎さんに渡す。

「ありがとうございます。そういえば新商品のイベントっていつでしたっけ?」

「六月一日です。山崎さん、ぜひ来てくださいね」

お土産を用意したのは、夏ショコラのイベントの取材をしてほしいから。イベント開催日を強調しながら答える。

「わかりました。必ず伺います。ところで園田さん、今日はここまで電車で来られたんですか?」

「はい、そうです」

「それなら送りますよ。乗ってください」

後部座席のドアを山崎さんが開けてくれる。

横浜から東京までのドライブは楽しそうだし、座って帰れるのは魅力的だ。しかし工場長に挨拶していないし、今日はこの後、部長とみなとみらいに寄る約束をしている。

「いえ、まだ仕事がありますので」

山崎さんの好意をありがたく思いつつも断ると、彼が後部座席のドアをパタンと閉めた。

「そうですか。それではここで。また連絡します」

「はい。失礼します」

いい記事が東京プレイスに載りますようにと、山崎さんが運転する車を見送った。

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