私の上司はご近所さん
気を揉んでいると話に展開があった。
「白石様、今から新しい商品をお届けいたしたいのですが、ご住所を教えていただけませんか?」
いつの間にかお客様の名前を聞き出した部長の対応はさすがだ。しかし穏やかな口調で会話をしている部長の様子を見る限り、お客様が憤慨しているようには思えない。
本当に新しい商品を届ける必要があるのだろうか。
そう考えていると、主任と目が合った。お客様とのやり取りが気になるのは、どうやら私だけではないようだ。
主任はヤレヤレと言いたげに肩をすぼめる。すでに入力作業に集中できなくなっていた私は主任の仕草に苦笑すると席から立ち上がり、部長のデスク前に向かった。
部長はメモにペンを走らせ、「それでは、のちほどお伺いいたします。失礼します」と挨拶をすると受話器を置いた。
「部長、すみませんでした」
忙しい部長に電話応対を変わってもらったことを謝る。
「俺が代われと指示したんだ。園田さんが謝ることじゃない」
「……はい」
まだ仕事に慣れてない新人の頃、外出先から電話をかけてきた取引先相手の話をうまく聞き取ることができず、怒らせてしまったことがあった。でも誰ひとり、私に救いの手を差し伸べてはくれなかった。