私の上司はご近所さん
ようやく今日の目的地である水族館にたどり着いたものの、入場券を買うのに一時間並び、やっとのことで水族館に入場したら楽しみにしていたイルカショーは満席で見られず、水槽は人だかりができていて肝心の魚がちっとも見えない。
それならば、と水族館を出て江ノ島に足を伸ばしてみたものの、通りは原宿の竹下通のように混雑している。仕方なく江ノ島を後にすると鎌倉方面に車を走らせてみることにした。でも海沿いの国道は上りも下りも大渋滞。こんな状態では会話が弾むわけがない。無言が続き次第に眠くなってしまった私は途中から記憶が飛び、気がついたらさつき通り商店街に到着していたという、なんとも残念な一日になってしまったのだ。
「翔ちゃん、眠っちゃってゴメンね」
ガレージに車を停めた翔ちゃんに謝る。
「別にいいって。しかし爆睡してたな」
「うっ……ゴメン」
私が最後に覚えているのは、助手席の窓から吹き込んできた潮風の匂い。水族館に行きたいと言ったのは私なのに、翔ちゃんに大変な思いをさせてしまったことが心苦しい。
「あー、腹減った。百花んちでなにか食わせてもらおうかな」
でも翔ちゃんは特に怒った様子も見せずに、おかしそうにケラケラと笑う。
「うん。そうしよ」
お腹が空いているのは翔ちゃんだけじゃない。車から急いで降りると、翔ちゃんとともに自宅である食堂に向かった。