王妃からの手紙 ~娘からの手紙に父王の反応は?~ (次期王の花嫁番外編
 帰国の報告と共に正式に紡がれた言葉。

『セーラ姫を正式にクスイに迎えたいと思っております』と。

 最初からそのつもりだったコセラーナはあっさり『いいよ』と応えたのだが、その後にもクーデノムの確認の言葉が続いた。

『…国外にはまだ公にはされていませんが、クスイの現王が王位を退いて、新王が誕生する予定になっております』

 思いがけない言葉に彼の真意を測っていた。

『現在は王と血族ということで側で文官をさせてもらっていますが、新王が起つことで私の地位も変化していくのは必然です』

 確信ある口調で語る表情に、嘘は感じられなかった。

『今の、文官の地位を必ず失うと判っている私でも、同じでしょうか?』

 真っ直ぐ見つめる瞳に今までにない力強さを感じたのを覚えている。

 一国の王と対峙しているのに全く物怖じしない、対等である視線に、笑ったのを。

『それこそ願ったり叶ったりだ。地位を失い路頭に迷うのならテニトラニスにくればいい。君の実力は立証済みだからな』

 滞在中に王の補佐的な仕事も彼にふったり意見を聞いたりと様子をみていたのだが、頭の回転も速く見事にやってのけていたのだ。

『ありがとうございます』

 深く礼を言って、クーデノムは部屋から出て行った。

 王の命令で遊学しているという文官・武官の二人。

 新王が起つというのなら忙しい職のはずなのに暇を出されているという事実。

 今のクスイの王城にとって彼らはいてもらっては困る事態になっているのか、と思案したりしていたのだが……。
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