アナタに逢いました
結局、200万を払う事には無理があって
裁判を経て…毎月少しずつだが、合計で100万を支払いをすることになった

さらには彼には
「ただの遊びだった」
と捨てられ、会社では不倫したことを悪びれもしない女として後ろ指をさされて針のムシロ…

本当に知らなかったのに

ただ、好きだっただけなのに…

知らずに道を踏み外した女になっていた私は
逃げるように会社を辞めた

もう2度と
男のヒトの甘い言葉には乗らないと決めて

友人のツテを辿って
ここ『休み』に雇って貰えるようになった

ここは私にとっても『休み』のような場所だ…



ざあざあと言う洗い物の音に忌々しい過去の記憶から…今へ意識が戻ってきた


「きりんさん!ご案内お願いします」

「はい」

レジに入った田中くんの声で急いで手を拭いてフロアに出ると

そこにいたのは目深にハンチング帽を被った

(イチさん…)

イチさんだった

「あ!きりんちゃんいた!」

夜のカフェ時間閉店間際の空いた時間に
先日の『イチ』が来た
席は壁に向かったの1人席で人気の席だ

「こんばんは…」

「オレの名前は?」

イチは目深に被ったハンチングの下で
ちょっと意地悪そうに切れ長の目で笑う

「イチ…さん」

(『1』で認識したから名前は分かんない…)

「ふ…数字は認識したってとこですかね?
そう『イチ』さんです。コーヒーを頂戴」

(バレてーら)

「畏まりました。ブレンドでよろしいですか?」

「はい…」

イチさんは何やらタブレットを触り始めた...

チラリと見ると肌もつるつるしていて、顎のラインはシャープで長い切れ長の目は近くで見ても綺麗だ

(恭哉も綺麗な顔してるし
イチさんもテレビに出るの人なんだろうか)

考えながらキッチンに戻り
柳川さんにブレンドを頼んでカウンターを片付けているとお客様が忘れていったのか鞄が残っていた

エコバッグだからサブに持ち歩いていたのだろうか

「柳川さん!カウンターにエコバッグの忘れ物があります」

「分かった、じゃ持ってきて...中で預かろう」

「は?」

柳川さんと一緒に中身を改めると私はその中身にギョッとした



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