アナタに逢いました
中には『K』と書かれたCDにデカデカと見知った顔が…

「のあ?!」

思わず変な声が出てしまった

「どうしたのきりんちゃん...K好きなの?
歌上手いしねー。恭哉くん」

「え?柳川さんは恭哉をご存知なんですか?」

(さらりと恭哉くんって…)

「ん?あ、うん。トモダチだしね
…最近では有名だしねぇ、さっきも来たでしょ?恭哉くん、たまに来てるからね…あれ?きりんちゃん知らなかったっけ?」

柳川さんは小さな声で話した

「今日はオレも来てますしね…」

スッと顔を覗かせたイチさんに柳川さんが声を掛けた

「久しぶり…今日は待ち合わせ?それならクローズ出すから言ってね…ゆっくりしてきなよ」

柳川さんは意味ありげにイチさんにウィンクした

「あっ…違う柳川さん、今日は単純に1人で珈琲飲みに来ただ、け...ははは」

イチさんはばつが悪そうに私を見て、小さな声で囁くように話した

「貴女は知らなかったんですよね?」

「はぁ、今もなにがなんだか」

あのぼんやりした恭哉が歌手?
しかもあんな、バッチリカッコいい感じにCDに写っちゃうような歌手?

「ですよね...恭哉さんは中々喋んないからなぁ」

「恭哉さん、村田さん、オレの3人のグループで歌手してんの」

私は呆然とした

「は?あ、あ、歌手…恭哉が?」

ぼんやりふんわりしてるアイツが?

「あの人がボーカルだよ…」

イチさんがフフと笑う
お客さんが居なくなったのを確認して柳川さんがクローズの札を出して戻ってきた

「ホントにきりんちゃん知らなかったんだ…」

柳川さんはビックリして私を見た

「どうりで村ちゃんと話してても気付かないわけだ…」

「テレビ…家にないし…」

私がそう言ったすぐあとにちょっと怠そうな
あの声

「いいんじゃん?知らなくたって」

「恭哉…」

不機嫌そうな恭哉が立っていた

< 11 / 18 >

この作品をシェア

pagetop