アナタに逢いました
「あの時さ、オレ少し疲れてて…ボーッと歩いてたら
めっちゃキレイな声で歌ってるキリンみつけたの」

「え…」

恭哉は何かうっとりするように呟いた

「後ろ姿がさ…真っ直ぐ夜空に向かって立ってて
…しかも歌がヴィオレッタ!」

「ヴィオレッタ?そーなんだ?」

「え?知らねーの?」

恭哉はキョトンとする

「昔…母がよく歌ってたの」

「ほー。かぁちゃん歌手?」

「若い頃に歌ってたらしいよ」

私が子どもの頃からいろんな歌を家事をしながら歌う人だったので耳で色々覚えてしまった

「なるほど。綺麗な声なのに若干Aが低いのは
かぁちゃんのクセなんだな」

恭哉は可笑しそうに笑いながら一人で納得しながらフフフと口を押さえた

「アレ見てさ、きりんの絵描いたんだ」

「は?私がガントリークレーン?!」

「ん。だってさ、でっかく夜空に延びてたし…ほら、その服だった」

(白と朱色...言われてみれば確かに…でも)

「まぁそうだけどさ、可愛くなさすぎでしょ?」

「ナニ?可愛いなって思って欲しかった?」

恭哉が急にテーブルから身を乗り出して私の手を掴んだ

ドコドコドコドコ

(煩い心臓!
ドキドキじゃなくてドコドコってどんだけよ!)

「可愛いよ?湖…」

(え?)

次の瞬間、グッと身体を持ち上げられ
テーブル越しに口付けられた

柔らかい唇が強く押し付けられて力が抜ける

「ん…」

何度か角度を変えた軽いキスが降ると
恭哉の腕が私の首筋に触れて後頭部を抑えていく

「んぁ…」

「舌、だして湖…」

言われるままに出した舌を絡めとられ
口内を娜ぶるように恭哉の舌が動く

段々と深くなり…
息継ぎも間に合わず息が苦しくて立っていられなくなる

ガタンっ

「っぶね...」

倒れそうになった私を恭哉が片手で抱き上げた

「…ご、ごめん…」

細いくせに男っぽい腕で、抱き止められた体が熱い…
視線がぶつかると

恭哉の甘い、でも欲望に少し掠れた声が聞こえた

「オレ、好きだよ湖の事」

「名前覚えてたんだ…」

「は?そこ?」

「あ、うん。」

先ほどから何度も恭哉は私を湖と呼んだから…
名前を覚えていることに驚いて

ナニを言われたかいまいちわかっていなくて、ぼんやり答えて恭哉の言葉を反芻した…

(ん?…は?好き?)

「え?好き?私をー?!」

「ちょっ…オレの告白返せや」

恭哉はブハッと吹き出すと…

後ろからからも吹き出す声が聞こえた…

「きりんちゃんアナタ、サイコーかよ!」

イチさんが出てきた

「え?あ?ええええ!!!!」

驚きすぎてガタンと椅子に崩れ落ちるように座る…

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