アナタに逢いました
気がつくと車に乗せられて
何だか高そうな(あ、高さも値段もね…)マンションの地下駐車場に車が滑り込み…

手を引かれるままに微笑むコンシェルジュのいる入り口を通り今はひろーい部屋にポツンと座らされた

車を降りる時…

「ありがと、サトルくん」

「いいえ、仕事ですから…でも…頼みますよ?色々と無茶しないでください恭哉さん…くれぐれも…」

「わーったから…バカなことはしないし、仕事もちゃんとやる。明日も遅刻しないよ」

なんて、運転してきてくれた恐ろしいほど顔の整った男性に声をかけてた恭哉…

今まで気付かなかったけど…恭哉の周りはイチさんや町さん(本当は村田)やあの運転してきた人みたいに美しくてキラキラした人ばかり

…私とは住む世界が違う人じゃないだろうか…

「何?緊張してんの?」


リビングでカチンコチンに固まっている私に恭哉は珈琲を淹れてくれた

「あんた、ナニモノ?」

「だから、アンタいや。きりん」

「ごめん…恭哉…私もきりんいや…湖だもん。ごめんね…私いつも名前が覚えられないのに…恭哉の名前はすぐ覚えたよ?綺麗な響き…恭哉って…」

そっと…隣に座る恭哉の腕に触れた
細いのにしっかり筋肉がついていて軽々と私を抱き上げるこの腕…

「恭哉ってナニモノ?」

「あ?ただのおっさんじゃね?職業が歌手ってだけ…かな」

スタスタっとキッチンに行くと缶ビールを2本持ってきた

「珈琲より、こっち飲む?」

「うん」

手を出すと、ぱしっと掴まれた

「え?」

「ばぁか、ホレ…」

恭哉はぐいっとビールを煽ると
私に口付けて流し入れた

(んんんー!!!!)

受け止めきれずに首をたどる液体を恭哉が赤い舌で舐め取っていく

「もっと飲む?」

唇をペロッと舐めて見せた色気を孕んだ目にゴクリと喉がなる…

(私、何ヨクジョーしてんのよ!)

「逃がさねぇ…」

身を引いて距離を置こうとした私の腕を引き止め
恭哉が首筋をペロッと舐め上げた

「ヒッ…」

「ほれ、おいで?」

手を広げて私を呼ぶので…

戸惑いながら揺れる瞳を見詰める
私はこの人に溺れ始めてる…

「いいの?」

恭哉はしっかりと見つめ返した

「甘やかしてやっから、おいで?…全部見せてよ…」

観念して胸に飛び込むと恭哉は私の頬を挟んで顔を持ちあげた

そのまま…恭哉の硝子細工のように美しい瞳に呼ばれるように吸い込まれるように唇が重なる
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