アナタに逢いました
「ふぅん……無事にくっついたなら何よりだね」

「はぁ……えと、町田さん…」

「おしい!ム・ラ・タね?きりんちゃん」

いつものようにスーツ姿の町田さん(村田)が
カウンターでニコニコしている

横からエスプレッソと野菜サンドをセットしながら観察すると…

(やっぱりよく見たらスーツがビジネス用じゃないわ……)

スタイリッシュ過ぎるスーツや髪色は
いわゆるオフィス働くのビジネスマンではなかった


「手に入れたらもう大丈夫だろうからさ
恭哉さん、撮影中とか、合間にすーぐどっか行くからさ
…きりん見に行くとか言って」

「あ…え?」

村山(村田)さんが私の頭をポンポンと叩く

「こら、村ちゃん…メ!」

すると後ろから恭哉が現れた

(やっぱり郵便局員だよ、その格好…)

紺色の上下のジャージのようね出で立ちで帽子を被った恭哉が私と村山(村田)さんの真ん中に入り込んできた

「仕事は遅らせた事ないよ?偉いでしょ?」

「そうだけどさ、みんなヒヤヒヤするんだよ!」

「チェッ……」

ちょっと口を尖らせた恭哉が私をチラとみる

『うら』

口がそう動いた

「…」

そして

「じゃ、オレ先行くわ」

と店の外に出ていった

私は柳川さんに声を掛けて少しだけ裏にはけて
裏口をあけようとすると裏口のドアの前でグイッともう一度扉の中に押し込まれた

グイッてウエストを抱かれて顎をあげると
恭哉が私に口付ける

「今日、遅くなるけど帰るから…家にいて」

「うん…頑張ってね…恭哉…」

連日レコーディングらしいから……

「あぁ…足んねぇ」

尚も深く口付けようとする恭哉を抗議してポカポカ胸を叩く

(ここ、いくら裏でもお店!!)

「きりんさん!盛るのその辺にして持ち場戻ってください」

姿は見えないけれど後ろから田中くんの声がする

「さかさかさか…!?田中くん?違うよ?」

「んだよ、邪魔すんなよ」

「ばか恭哉っ!」

恭哉は私の耳の下にカプッと噛みついた…

「んふふ…またな。湖らしく、ずっこけながら仕事してこーい」

こちらにフニャッと微笑むと
するりと私の横から裏口を開けて外へ出ていく恭哉…

私はその美しい身のこなしにみとれながら…再度身支度を整えた

アイツに出逢ったから
長い痛みが終わったし

アイツに出逢ったから
長い?恋が始まった

恭哉に逢ったから
恋なんてめんどくさいものも…素敵にしたい。

ここからまた新しく始まるんだ


(まずは、働きますかね)

みつけてくれた
アイツ…恭哉に恥じない自分で居たいから

私は今日も精一杯やるだけだ

「いらっしゃいませ」




fin
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