PMに恋したら

私は立ち上がるとベッドの上のグレーのスウェットを取って畳んだ。畳んだはいいものの、どこにしまったらいいのかわからずに結局そのままベッドに置いた。
ふと見たベランダのカーテンの隙間から曇った空が見えた。カーテンを開けると空はどんよりと灰色に染まり、今にも雨が降ってきそうだ。

「実弥」

「はい!」

洗面所のドアが少し開いて隙間から名前を呼ばれた。

「スウェットとってくれる?」

「スウェット……」

ベッドの上から畳んだばかりのスウェットを取ると、洗面所のドアの隙間から中に差し出した。ドアの向こうに裸のシバケンがいると思うと緊張してしまう。

「ありがとう」

スウェットを受け取るとドアの向こうで穿く気配がした。バスルームから離れようとしたとき、ドアが開いてシバケンが出てきた。その格好に思わず口をポカンと開けてしまった。スウェットを穿いたシバケンの上半身は裸だった。高い身長に程よく筋肉のついた身体。制服やスーツを着ているだけではわからないスタイルの良さだ。
髪をタオルでふくシバケンと目が合い、濡れた髪と火照った身体の色っぽさに私の心拍数が上がった。

「…………」

シバケンは固まる私を気にかけることもなく、横を抜けてタンスの中からティーシャツを出して着た。布の下に肌が隠れると、私の呼吸も少しずつ落ち着いてくる。

「ほんと、だらしないとこ見せちゃったね」

そう言って私の手を引いて再びローテーブルの前に座らせる。私の横に座った彼は首にかけたタオルを頭に被せて髪をふいた。

「また幻滅したでしょ。思ってた男と違って」

「そんなことはないですよ」

タオルの間から覗くシバケンの顔は落ちこんでいて私は慌てて否定する。

「大丈夫です。この程度で嫌いになったりしないし、かっこいいのは変わらないですよ」

私の気持ちに一喜一憂する彼の姿も意外だった。こんな一面もあるのだと新しく知ることばかりだ。

< 74 / 143 >

この作品をシェア

pagetop