PMに恋したら
「ならいいじゃない。連絡も取り合ってるんでしょ?」
「うん……今は忙しそうだけどね」
シバケンが忙しいのなら、コンビを組む高木さんも同じく忙しいだろう。
高木さんが優菜をすごく大切に想っていることはシバケンから聞いていた。優菜が少しでも高木さんを気に入ったのなら付き合えばいいと思っている。
「でもさ、高木さんイメージと違うんだもん。警察官ってもっと真面目なイメージだったの。高木さんは軽いんだよノリが」
「まあ……それは……」
否定はできない。高木さんは職業イメージを足したとしても真面目とは縁がなさそうだ。
「柴田さんみたいだったら良かったのに」
シバケンの名前を出されてどきりとする。
「柴田さん優しそうだし、ザ、警察官って感じだよね」
「あはは、そうだね」
シバケンを褒められて嬉しい。確かにシバケンは真面目な人だ。
「高木さんは悪い人じゃないんだけど……お付き合いしたらこの年じゃ結婚だって考えるじゃん? そうなると直感と勢いよりも私との相性優先で考えちゃうよ……」
「まあその気持ちはわかるよ」
高木さんのノリは物事を慎重に考えて思い詰める性格の優菜とは合わないかもしれない。
「実弥は柴田さんと順調?」
「ああ、うん」
優菜にシバケンが家に挨拶に来たこと、坂崎さんとのことを話した。
「箱入り娘も大変だね」
「箱入りって……」
「でも羨ましいな……家族と一緒に生活して」
優菜は大学進学と同時に一人暮らしをしていて実家が恋しいようだ。
「家を出ちゃうのも、私からするともったいない話だよ」
優菜の言葉に反論したくなるのを抑えた。家族の問題は人それぞれ価値観がある。私の父に対する感情を優菜にぶつけて暗い気持ちを共有したくはなかった。
「もう私も自立しないとだしさ」
そう言って不動産会社からもらってきたアパートの間取り図を優菜に見せた。