四面楚歌-悲運の妃-
一度私から身体を離すと、お互い見つめ合う。
陛下…
私も警護のたびに胸は痛みます。
けれど、私は陛下をお守りする為にここにいる。
拒否る事も胸を痛める事も、してはいけない…。
ましてや、陛下に私もだと告げる事も出来ない。
陛下から視線を外し俯くと、陛下の手が顎を持ち上げる。
「仮面など…気にはしないと言ったであろう?
そなたは私の妃だ。
皇帝である私が、妃のそなたを求めて何が悪いのだ?
言いたい者には言わせておけば良い。」
陛下がの顔がゆっくりと、私の顔に近づく…
唇と唇が重なり合い、熱を放ち溶け合う。
唇が離れると、陛下の指先が私の唇をなぞる。
「鼻と口しか冥紗の顔を見る事が出来ぬが、この唇からそなたは美しいのだと感じさせられる…。
心配しなくてもいい。
冥紗の良さは、私だけに分かっていればいい。
私を拒まないでくれ。」
陛…下…。
口付けと言葉で酔わされる心…。
抑えていた気持ちが、抑えきれなくなる程溢れ出す。
陛下が望むのであれば
私は…
私は
陛下の背中に腕を回し、抱きしめ返す。
「冥紗…。」
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