四面楚歌-悲運の妃-


少し休んでから李燗の所へ行こうと思っていたのに…

それほど疲れている自覚はなかったが、身体は疲れていたのだろうか


それに、昨夜は晏惟が…



「昨夜は四天王様方も警護の任もなく、黄麟殿・皇后宮とも先帝後宮軍の方々がされたそうです。
それ故、昭儀様を起こさずいたのです。
申し訳ありません。」


昨夜黄麟殿には私や晏惟以外の四天王が警護につく事はないだろうが、皇后宮の事は心配だった。


それ故、仮眠程度に眠ろうと思っていた。




『そうか…では、双方何もなかったのだな?』


「はい。皇后宮にも異常なく、…欺修媛様は御無事に黄麟殿にお渡りになられ、今この時まで何もございません。」


言いにくそうに小さな声で、困ったように威仔が言う。


昨日の話の後だ


威仔なりに気を使っているのだろう。


優しさが嬉しくもあるが、同時に胸が痛む。


威仔に向ける笑みが、ぎこちなくなってしまう。



『それは良かった…。
寝ている間に何か言伝は?』


いつまでもこの空気を引きずる訳にもいかない。


私にはせねばならぬ事があるのだ。


「あ、はい。
牛の刻に舞妃ノ宮に来ていただきたいと、汪軍妃官から言伝がございます。」


私達以外の護衛の軍妃選出をするのであったな。


急を要すること故、時速な対応をせねばならない。


私が寝ている間にも、汪軍妃官は選出をしていただろう。


私もやれる事はせねば


『早急に用意を…』


寝台から素早く降り、頷く威仔と共に出る支度へ取り掛かる。


まずは…李燗に会わねば――――。



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