恋のかけ引きはいつも甘くて切なくて
〈まもなく上浦学園前。
上浦学園前でございます。
お降りの際はお足元に注意して下さい。〉
その人に肩を抱かれて
バスに揺られること数分。
アナウンスと同時に
バスは、大きな学校の前で停まった。
同じ制服を着た人達が、
一斉に外に出て行く。
私もその流れに流されるように、
バスの外へと出た。
お礼言わなくちゃ…。
私はそう思い、
バスの外で、男の子を待つ。
だけど、その男の子は
最後まで出て来なかった。
あれだけの人だったから
もしかしたら見失っちゃったのかも…。
「あーあ…。
ちゃんとありがとうって
言いたかったのに…。」
私は小さなため息をつくと、
次のバスで未玖が来るのを
正門で待った。