恋のかけ引きはいつも甘くて切なくて
名前くらい…
聞けば良かったな。
「顔しかわかんないや…。」
正門の壁に寄りかかりながら、
そんな事を考える。
「ひより〜‼︎」
ー‼︎ー
すると、少し先の方から
未玖の声が聞こえて来た。
急ぐように小走りで
こっちに向かって来る。
「ごめんねー‼︎大丈夫だった⁉︎
人多かったでしょ〜‼︎」
「うん。多すぎて
びっくりしたよ〜。」
「初日なのに本当に
ごめんね〜(泣)
よしっ、行こっか‼︎」
「うんっ。」
未玖は申し訳なさそうに
胸の前で手を合わせると、
私の手を引いて歩き出した。