優しい魔女は嘘をつく

「いいよ」──私は無意識のうちに言葉を出していた。




堂本くんが何をしようとしているのかが分かった。だから、止めてほしかった。




「そんなことしたら、すぐに誰の字かバレるよ」



「なんて書けばいい?」





堂本くんは私の言葉を無視して聞いてきた。



ねぇ、堂本くん。




堂本くんは、優しすぎるんだ。それが今の私には、辛い。




前に言ってたじゃん。他の人から変に見られるのが嫌だ、って。



わざわざ嫌われるようなこと、しないでよ。十分だから。




……もう、十分だから。




私は立ち上がり、堂本くんの前にしゃがむ。

< 128 / 301 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop