優しい魔女は嘘をつく
「いいよ」──私は無意識のうちに言葉を出していた。
堂本くんが何をしようとしているのかが分かった。だから、止めてほしかった。
「そんなことしたら、すぐに誰の字かバレるよ」
「なんて書けばいい?」
堂本くんは私の言葉を無視して聞いてきた。
ねぇ、堂本くん。
堂本くんは、優しすぎるんだ。それが今の私には、辛い。
前に言ってたじゃん。他の人から変に見られるのが嫌だ、って。
わざわざ嫌われるようなこと、しないでよ。十分だから。
……もう、十分だから。
私は立ち上がり、堂本くんの前にしゃがむ。