優しい魔女は嘘をつく
堂本くんは私を見て、驚いていた。「なんだよ」と言いたげなその目は、少し揺れているようだった。
「私は……こうやって、私のことを見てくれている人がいるだけでいいの」
さらさらと、風に吹かれた横髪が頬をくすぐった。
目の前の強い瞳の奥に、今にも壊れそうな自分の笑顔が映っていた。
「魔法が解けたら、メッセージはいくらでも書いてあげるから」
冗談を言った私だけど、堂本くんは珍しく何も言わなかった。
そして、私は少し間を置いてから、言った。
「文化祭が終わった後に魔法が解けるなら……今からやれることをするよ、私は」
「……」
きっと、魔法が解けるのはまだ先だ。
……もしかしたら一生、このままかもしれないんだけど。