【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
麻耶は打ち合わせや事務仕事をこなして時間になった為、ドレスショップに向かうため館内を歩いていた。
まだ寒い時期だが、日差しが降り注ぎ気持ちの良い日差しに麻耶も目を細めて空を仰いだ。

平日という事もあり、穏やかな空気が漂っており時折工事の音が響いていた。

(もうすぐだな……)

バンケットの工事も最終段階に入っており、庭園のプールの水入れも始まっていた。
ドレスサロンは少し離れた白を基調としたかわいらしい建物で、たくさんの奇麗なドレスが外からも見える。
ヨーロッパの小さな郊外のショップという佇まいだ。

(本当の結婚式ならウキウキして選ぶんだろうな……振られたばかりの私には辛いだけだけどね)

自嘲気味な笑いを浮かべながら、歩いていると、前から芳也と始が歩いてくるのが見えた。

(今日は秘書さん一緒じゃないんだ)

そんな事を思いながら前から歩いてくる二人を見ていた。
傍から見ても、整いすぎた二人はどこかの雑誌の撮影のように見えて麻耶はドキンと胸が音を立てた。

緑の木々と後ろにそびえるチャペルの十字架。その前にかっこいい男。
(うん!目の保養をした!がんばらないとね。仕事なんだし)
そんな事をぼんやりと考えて現実逃避していると、目の前にドンと壁ができて麻耶は顔をしかめた。

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