主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-③ 
やはり子供は子供。

翌朝百鬼夜行から主さまが戻って来ると、朔と輝夜は普通通りにしていても若干挙動不審なのは否めず、主さまにそれを看破された。


「…どうした?」


「え…?何が…ですか?」


共に朝餉を食べながら、いつもはよく喋る輝夜は黙々と米を口に運び、朔は箸を止めて主さまと目を合わせず視線を落としたまま返した。


「…いつもと違う。何かあったのか」


「何もありません。ご馳走様でした」


そそくさと朔が席を立ち、輝夜も慌てて箸を置くと行儀よくごちそうさまでした、と頭を下げて後を追う。

雪男は縁側で木刀を短刀で削りながらそれをはにかんで聞いていた。


「…おい、何があった?」


「は?何もねえよ。変な夢でも見たんじゃないかな」


「隠し立てするとお前のためにならんぞ」


「なんで俺の責任みたいな言い方すんだよ。あいつらのことはちゃんと見てます!主さま以上にな」


ふふんと鼻を鳴らして胸を逸らす雪男に舌打ちした主さまは、今度は息吹にそれを問うてみた。


「朔たちはどうかしたのか」


「え?どうもしないよ?でも朝ちょっとぐずってたかな。夜遅くまで起きてたみたい」


「…」


いつもふたりを見ている息吹と雪男が口を揃えてそう言われると、いつも子供たちを見る暇がない主さまは何も言えなくなる。


だが子供たちの変化には敏感だ。

ふたりの背が伸びたのも分かるし、特に朔の成長が著しく、次期当主たらんと勉学に励んでいることも知っている。


「…雪男」


「おう」


「…あの子たちに何かあればお前を殺すからな」


「はい来た脅し文句!息吹になら殺されてもいいけど主さまには殺されたくないからよく覚えておくよ」


憎まれ口を叩かれて、また舌打ち。
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