主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-③
主さまと晴明は仲が良いのか悪いのかよく分からない。
会えば憎まれ口を叩き合い、結果毎回主さまがやり込められて憮然とした表情になって、息吹が笑う――その光景は実に微笑ましい。
「俺はさ、そういう時の息吹の笑顔が好きなんだ」
「なんだよ俺たちの母様はお前にはやらないぞ」
「ちょっと褒めただけだろ。ああいう笑顔、俺には見せない。でもまあいっかって最近思うことも多いんだよな」
「あなたには少し先だけど最高の伴侶に出会えますよ」
…
……輝夜がきっぱりとそう言ったため、雪男は思わず立ち止まって何故か髪を伸ばし始めた輝夜の長い前髪を払って顔を覗き込んだ。
「なんだよ急に。どうした?」
「いいえ別に。そう思っただけです」
未来を見通す力――まだ不完全だが輝夜には生まれた時からその力は備わっていた。
そして朔がその力を持つため急に姿を消したりぼんやりしてしまう弟を深く案じていることも知っていた。
だからこそ、朔が最近口癖のように言う言葉がある。
『早く大人にならなきゃ』
そんなに急いで大人にならなくてもいい、とどんなに説得しても、頑固一徹な面のある朔は頑として首を縦に振らなかった。
早く大人になって弟を守らなければ、と時々そう零して大人びた表情をすることがある。
主さまもそれには気付いていて、朔を注意深く見ていてくれと頼まれている。
「おい長男の方、俺にはどんな嫁が来ると思う?息吹みたいに可憐な感じかな」
「知るか。輝夜の予言が外れたとしても、仕方ないからお前には俺たちの妹を嫁にやってもいいぞ」
「ほほう、俺を親戚にさせるつもりか?…いや待て待て。主さまと対決する自信はないから盛大に却下!」
話しているうちに晴明の屋敷に着き、大きな観音扉の前に立つと押してもいないのに扉が勝手に開いた。
「相変わらず気の利くことで」
扉が開くと大きな池には人魚の姿。
そして庭には――息吹がここに住んでいた時に植えた花々を背に微笑を浮かべて立っている晴明が。
「私の孫たちよ、よく来たね」
「俺のことは無視かい」
どこに行っても、いじられ役。
会えば憎まれ口を叩き合い、結果毎回主さまがやり込められて憮然とした表情になって、息吹が笑う――その光景は実に微笑ましい。
「俺はさ、そういう時の息吹の笑顔が好きなんだ」
「なんだよ俺たちの母様はお前にはやらないぞ」
「ちょっと褒めただけだろ。ああいう笑顔、俺には見せない。でもまあいっかって最近思うことも多いんだよな」
「あなたには少し先だけど最高の伴侶に出会えますよ」
…
……輝夜がきっぱりとそう言ったため、雪男は思わず立ち止まって何故か髪を伸ばし始めた輝夜の長い前髪を払って顔を覗き込んだ。
「なんだよ急に。どうした?」
「いいえ別に。そう思っただけです」
未来を見通す力――まだ不完全だが輝夜には生まれた時からその力は備わっていた。
そして朔がその力を持つため急に姿を消したりぼんやりしてしまう弟を深く案じていることも知っていた。
だからこそ、朔が最近口癖のように言う言葉がある。
『早く大人にならなきゃ』
そんなに急いで大人にならなくてもいい、とどんなに説得しても、頑固一徹な面のある朔は頑として首を縦に振らなかった。
早く大人になって弟を守らなければ、と時々そう零して大人びた表情をすることがある。
主さまもそれには気付いていて、朔を注意深く見ていてくれと頼まれている。
「おい長男の方、俺にはどんな嫁が来ると思う?息吹みたいに可憐な感じかな」
「知るか。輝夜の予言が外れたとしても、仕方ないからお前には俺たちの妹を嫁にやってもいいぞ」
「ほほう、俺を親戚にさせるつもりか?…いや待て待て。主さまと対決する自信はないから盛大に却下!」
話しているうちに晴明の屋敷に着き、大きな観音扉の前に立つと押してもいないのに扉が勝手に開いた。
「相変わらず気の利くことで」
扉が開くと大きな池には人魚の姿。
そして庭には――息吹がここに住んでいた時に植えた花々を背に微笑を浮かべて立っている晴明が。
「私の孫たちよ、よく来たね」
「俺のことは無視かい」
どこに行っても、いじられ役。