主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-③ 
輝夜から事情を聞いた雪男は、大きく深いため息をついた。


それを見た朔と輝夜はやはりこの男に迷惑をかける結果になってしまったのかと表情を曇らせて互いに手を握り合った。


「雪男…父様に言うのか?」


「これは息吹の問題だ。息吹の問題ということは、主さまの問題でもある。輝夜、お前が気付いたことはとてもすごいことだぞ。よくやった」


頭を撫でられた輝夜はそれでも不安を拭えず、思い詰めた表情で雪男を見上げる。


「どうする…つもりですか?」


「晴明に頼んだんだろ?なら晴明がその女を見つけるまで黙っていよう。怒られたら怒られた時!諦めろ!」


爽快すぎる答えに朔と輝夜に笑顔が戻る。

あまり怒られたことはないが、怒られたとしても謝り倒して許してもらう自信があった。

父は自分たちに弱いのだ。


「ほら、そろそろ戻るぞ。遅すぎると疑われるからな、さっさと帰ろう。晴明、牛車ありがとな」


「ああ、つけにしておいてやろう」


軽く手を挙げて別れた雪男は牛車にふたりを押し込めて最後に乗ると、ぴたっとくっついてくるふたりににかっと笑いかけて寝転んだ。


「ここまでついて来てやった報酬に何をしてもらおっかなー」


「俺が百鬼夜行の主になったらお前を側近にしてやる」


「え?それって報酬なの?それって罰じゃね?」


「兄さんの側近ですよ?私がなりたいくらいですよ、羨ましいな」


――輝夜が発したその言葉に朔と雪男が少しだけ眉をひそめた。


このまま一緒に過ごしていくのではなく、どこか遠くへ行くような言葉だったからだ。


朔がまた輝夜の手を握る。

離すものか、と決意を込めるように。
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