夢うつつ

「ってぇぇぇ!!」
「起きたか。ものの見事にやられたね。まぁ、ある程度手加減はしたようだが」
「疾風は?」
「麻酔で眠らせている。かなりショックだったようだしね。それにあの怪我でお前を守るつもりでいる」
 隣のベッドで横になる疾風を見てほっとした。
「両腕の骨を折られたよ。まぁ、医師も驚くほど綺麗に骨を折ったそうだから、早く繋がるのではと言っていたよ。お前は軽い脳震盪を起こしただけだそうだ。顔の腫れだけはどうしようもないだろうがね」
「正直、何があったのか分からない」
「あの兄弟の得意技だ。相手の呪術を見てそれを使って敵を倒す」
 話の種にと見舞いにきた知己が苦笑して言う。
「しっかし、よくもまぁ、呪術寸止めできたな。初めてだと大抵、放ってから気がつく。だと、体力も呪力もかなり消耗しちまう」
「いや、放とうとしたら妖魔がいなくて驚いた」
「驚く暇を与えてくれたか、それともお前が気がついたか。どちらかだろうが、一回くらった俺から言わせると本当にたいしたもんだよ」
 それだけ言って帰っていく。
「褒められた気がしねぇ」
 思わず呟く。
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