政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
コン、コン、コン。
そのとき、ノックの音がした。
「あの……お茶とケーキのご用意ができたので、奥さまがリビングルームに来るように、と」
ドアの向こうから女の子の声がした。
……たぶん、わかばさんだろう。
将吾さんがチッ、と舌打ちした。
「おふくろのヤツ、邪魔しやがって」
少年のようにふてくされた顔をしている。
それでも、わたしから離れてドアの方へ行って、わかばさんに応対した。
「すぐ行くからって、マイヤさんに言っといてくれる?」
わたしの位置からは見えないが、きっとまた、蕩けるような笑顔を見せているに違いない。
戻ってきた彼を見て、わたしは苦笑した。
「ついてる」
ボリードからウェットティッシュを取り出し、一枚引き抜かせる。
「おっ、Thanks.」
彼がすぐにくちびるを擦るかと思ったら、急に抱き寄せられた。
「……彩乃……もう一回」
掠れた声でそう言って、将吾さんはまた、わたしにくちびるを重ねてきた。
わたしもすぐにくちびるを開いて、彼のくちびると舌に応える。
……キスならいいのだ。
何度でも、何回でも、あなたに応えられる。
キスだけ、なら……