政略結婚はせつない恋の予感⁉︎

「たった一日で、こんなに彩乃にぴったりなリングが見つかるわけないわよ。しかも、見るからにグレードの高そうなダイヤモンドを使ってるし」

慶人を引っ張り回して、やっとこさピアジェに決めた蓉子が断言した。

「富多のヤツ、彩乃に似合う指輪をあらかじめ調べてやがったな」

太陽がぼそっとつぶやいた。

「あいつはゼミの発表や卒論でも、しつこいくらい徹底的に調べるタイプだったからね」

慶人が大学時代に思いを馳せた。

「ねぇ、彩乃。秘書さんがずーっとタブレットで仕事してたって、ほんとは富多さんとリングのことで連絡を取ってたんじゃないの?」

蓉子が上目遣いで訊いてきた。

「そのとき、将吾さんはアメリカ支社の人たちとWeb会議をしてたから、メールで連絡を取り合ってたとは思うけど、リングのことじゃないよ。
だって、思いっきり私用じゃん……国際会議の真っ最中だったんだよ?」

わたしは、ない、ない、ない、と目の前で手を振った。

「島村さんは律儀な人なの。忙しいのに、わたしがリングをつけた『証拠写真』まで撮ってくれてたんだよ?」

本当に、あのときは島村さんにご足労かけた。

「それって、秘書さんがその写真をタブレットで送って、富多さんが最終的にどれにするか決めたってことじゃないっ!」

蓉子が確信を持って叫んだ。

……いやいやいや。それは美しすぎる誤解だわ。

わたしは、ない、ない、ない、と目の前で手を振り続けた。

< 280 / 507 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop