政略結婚はせつない恋の予感⁉︎

綿帽子に白無垢姿から、真紅の色打掛にお色直しをした亜湖さんは、本当におひなさまのように可憐で美しかった。
最近は自分の髪で結った洋髪が人気だが、亜湖さんは日本髪である。

幼い頃、一度しか見たことがないとはいえ、あのときの「市松人形」が成長して「お嫁さん」になったのが感慨深い。

紋付(はかま)で、お内裏さまというよりは江戸時代のお侍のような(たたず)まいの大地が、ずーっと亜湖さんを見つめている。一刻(いっとき)でも彼女から目が離せないのだろう。

「……亜湖、おめでとうっ!……すっごく綺麗」

一足先に「新妻」になった蓉子が涙ぐむ。

今日の彼女はエメラルドグリーンのオフショルダーのセミイブニングドレスを着ていた。

「ありがとう……蓉子」

亜湖さんも目に涙を浮かべて微笑んだ。

「亜湖さん、ご結婚おめでとうございます。
本当にお着物が似合ってて、素敵だわ。
わたしも蓉子もこんなだから、和装が似合わないの。だから、とってもうらやましいわ」

彼女の真紅の色打掛は、金糸や銀糸をふんだんに使って鶴などが施された総刺繍のものだった。

「彩乃さん、今日はお越しくださってありがとうございます……次はあなたね。四月を楽しみにしてるね」

亜湖さんはわたしに丁寧にお辞儀したあと、ふっくらと微笑んだ。

「……おい、おれには『おめでとう』はないのか?」

大地がムッとした顔で抗議した。

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