政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
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その夜、マンションの部屋で豚の生姜焼きの下(ごしら)えをしていたら、スマホに通話があった。
今から帰る、という海洋からかと思ったが違っていて、母親からだった。

「彩乃、結婚式の招待状を発送してもいいわよね?」

……あっ、もうそんな時期だった。

四月末の結婚式まで、二ヶ月を切っていた。

「ママ、悪いけど……もうちょっと待ってくれる?」

わたしはおずおずと言った。

「あら、なあに?どうしたの?将吾さんとケンカでもしたの?」

なにも知らない母親は能天気に訊いてくる。

……ただのケンカじゃないのよ。婚約破棄なのよっ。

「とにかく、発送するのはもうちょっと待って」

「『もうちょっと』って、いつまでよ?
出席してくださる方に失礼があってはならないのよ?」

母親は至極真っ当なことを言う。

「こ…今週末までには、返事するから」

わたしは苦し紛れに絞り出した。

「わかったわ……でも、それ以上は待てないわよ?」

そう言って、通話は切れた。


自分で決めたリミットとはいえ、短すぎる……

とにかく……逃げてばかりいないで、
将吾さんと「婚約破棄」について……

……ちゃんと話し合わなければ。

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