『ツインクロス』番外編
幸いなことに、男たちは夏樹を普通のか弱い女の子だと思っているらしい。

手足を縛られたりはしておらず、身動きは何も制限されていない。

しっかり取り囲まれてはいるものの、この人数なら何とかなるかも知れない。

だが…。


(気をつけなきゃいけないのは、さっきの拳銃だ…)


こいつらが、どんな集団かは分からない。

もしも組関係や何かだとしたら、それが本物だということもあり得るのだ。

(でも、逆にあれが本物だとしたら…。尚更このまま大人しく言うことを聞いてる訳にはいかないっ)

自分が此処にいることで兄たちが本来の動きを封じられて、もしも怪我をしたり命に関わるようなことがあったら、自分は後悔してもしきれない。


「それにしても、あんた綺麗な顔してるなァ。兄貴は双子なんだろ?やっぱり似ていたりするのか?」

一人の男が膝をついて夏樹の顔を覗き込んで来た。

どうやら、ここにいる奴等は素性を調べただけで冬樹の顔までは知らないようだ。

(…そんな直接面識さえない奴に、ふゆちゃんを恨む権利なんかないっ)

こうなったら、一か八かで暴れてやる。


夏樹は俯いたまま口の端に笑みを浮かべると、拳に力を込めた。

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