『ツインクロス』番外編
「オレ…実は、なつきのことが好きなんだ」


不意に緊張気味に話し出した雅耶の、その思わぬ内容に冬樹は面食らった。


「えっ?そうなの?まさや。それって、もしかして『れんあい』なイミで?」

「うん…。なつきにはナイショだぞ」


頬を染めて恥じらう幼馴染みに。

やはり、身体つきも自分たち兄妹より一回りも二回りも大きな幼馴染みは、そういう心の面でも先に大人になって行くのだろうか。

冬樹は、ほんの少しだけ置いてけぼりを食らったような気持ちになった。

だが、何より相手は自分の妹である夏樹だ。

ここは相談に乗ってあげるべきだろう。


「それって、まさやの『はつこい』?」

「モチロン。こんな気持ちになったの、オレ初めてだもん。ふゆきは?そういう人いないの?」

普通に聞かれて。

「いるわけないよ。だって、まだよく…分からないもん」

「…そっか」

だいたい、いつも雅耶と夏樹と自分の三人でいるのだ。他の人に目が行きようもないような気がするのだが。

(ボクもなっちゃんのこと大好きだけど…。でも、そういうのとは、きっと違うんだろうな…)

やはり良く解らなかった。


「でもさ…なつきは?だれかのこと好きだったりするのかな?ふゆきはそういう話とか聞いたことない?」

「ええっ?なっちゃんのッ?」

聞いたことは勿論、そんな人がいるなんて考えたことさえなかった。

「うーん…。どうだろう…?」


大切なあの子に、そんな人がいるのだろうか…。

何だか聞くのがこわいな…と思う冬樹だった。
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