『ツインクロス』番外編
「あなた…やっぱり、野崎くん…なの…?」
有り得ないと、そう思いながらも。
どこか寂し気な表情を浮かべたまま、こちらを見つめているその真っ直ぐな瞳は、まさしく彼のものであり、無言で自分の言葉を肯定しているのだと理解した。
「何…で…?」
こんなことって、あるのだろうか?
先程までは、何処から見ても同年代の少女にしか見えなかったというのに。
目の前にいる人物は、以前の彼の面影を隠すことなく静かに口を開いた。
「唯花ちゃんが雅耶のことを本当に好きなんだってことは、近くで見ていたから知ってるよ。でも、こんなことをしたって何の解決にもならない」
「あっ…」
ずっと掴まれたままだった腕を、そっと外される。
「唯花ちゃんが後々、辛い思いをするだけだ」
唯花の性格上、本来ならば同性にそんなことを指摘されようものなら反感から逆上しているところだ。
だが、以前出会った少年の面影が、それらの言葉を飲み込ませた。
何より嫌味のない真っ直ぐな彼の言葉が、心にストン…と落ちてくる。
「唯花ちゃんと雅耶の間に何があったのか、オレには分からないけど…。キミと別れるなんて雅耶は女の子を見る目がないなって…。ずっと、そう思っていたよ」
「……っ…」
あの時の少年の瞳でそう語る目の前の人物は、それ以上は語らず寂し気に微笑むと、呆然と佇んでいる唯花の横を通り抜け、ゆっくり出口へと歩きだした。
「あっ…待っ…」
何故『冬樹』が現在、少女の姿をしているのか。
唯花がどんなに考えても答えが出てくることはなかったけれど。
去ってゆく、その寂し気な背中に唯花はそれ以上声を掛けることが出来なかった。
有り得ないと、そう思いながらも。
どこか寂し気な表情を浮かべたまま、こちらを見つめているその真っ直ぐな瞳は、まさしく彼のものであり、無言で自分の言葉を肯定しているのだと理解した。
「何…で…?」
こんなことって、あるのだろうか?
先程までは、何処から見ても同年代の少女にしか見えなかったというのに。
目の前にいる人物は、以前の彼の面影を隠すことなく静かに口を開いた。
「唯花ちゃんが雅耶のことを本当に好きなんだってことは、近くで見ていたから知ってるよ。でも、こんなことをしたって何の解決にもならない」
「あっ…」
ずっと掴まれたままだった腕を、そっと外される。
「唯花ちゃんが後々、辛い思いをするだけだ」
唯花の性格上、本来ならば同性にそんなことを指摘されようものなら反感から逆上しているところだ。
だが、以前出会った少年の面影が、それらの言葉を飲み込ませた。
何より嫌味のない真っ直ぐな彼の言葉が、心にストン…と落ちてくる。
「唯花ちゃんと雅耶の間に何があったのか、オレには分からないけど…。キミと別れるなんて雅耶は女の子を見る目がないなって…。ずっと、そう思っていたよ」
「……っ…」
あの時の少年の瞳でそう語る目の前の人物は、それ以上は語らず寂し気に微笑むと、呆然と佇んでいる唯花の横を通り抜け、ゆっくり出口へと歩きだした。
「あっ…待っ…」
何故『冬樹』が現在、少女の姿をしているのか。
唯花がどんなに考えても答えが出てくることはなかったけれど。
去ってゆく、その寂し気な背中に唯花はそれ以上声を掛けることが出来なかった。