御曹司と婚前同居、はじめます
案内されたのは二人にはあまりにも広すぎる個室だった。


「ここなら多少はリラックスできるだろう?」


まさかここまで考えてくれていたなんて。


「贅沢過ぎるよ……」


情けないくらいの弱々しい声が出た。


「堂園化成の一人娘の言葉とは思えないな」

「なんちゃってだからね」

「そうだな。美和は良い意味で普通だ」

「それはどうも」


瑛真は嫌味なんて言わない。だからきっと言葉通りなのだろう。

メニュー表には値段が書いておらず、文字も読むことができなかったので注文は全て瑛真にお任せした。

食事が運ばれ、とても静かな時間が流れた。

咀嚼する音までもが正面の彼に聞こえていそうで少し落ち着かない。

創一郎さんは食事中によく喋る人だったけれど、瑛真は家で食事をとる時も口数が少ない。

だからいつも自分と瑛真の手元に視線がいく。

男の人の手を見てドキドキするなんてこと、今まで一度だってなかったのに……。

緊張を煽るだけだと分かっているのに目が離せない。

あの手がいつも私に触れているんだよね……。
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