御曹司と婚前同居、はじめます
◇
昨日用意されたドレスと靴とアクセサリーで見事に着飾った姿で、名前だけは聞いたことがある有名ホテルのロビーを歩いている。
喉はからからに乾いているし、さっきから全身の小刻みな震えが止まらない。十センチはあるヒールのせいもあって足がうまく上がらない。
気を付けないと転びそうだわ。
そのせいもあって、瑛真の腕に添える指先にも力が入る。
「まさかここまで緊張するとは思わなかった」
心の底からそう思っているのだろう。目を丸くして私を見ている。
「当たり前でしょう? こういうのには慣れていないんだから」
「そうか。でも、俺の妻となればこういう機会も増える。大変かもしれないが、少しずつ慣れてくれるとありがたい」
唇をキュッときつく結んだ。
瑛真は私が抱いた劣等感を払拭するためにこういう機会を与えてくれたのだろうけど、私にしてみれば余計に引け目を感じてしまうだけだ。
めちゃくちゃ浮いていると思うんだけど……。
それらしく振る舞うべきなのだろうけれど、どう頑張ってもそれは無理だ。どうしたって挙動不審になってしまう。
昨日用意されたドレスと靴とアクセサリーで見事に着飾った姿で、名前だけは聞いたことがある有名ホテルのロビーを歩いている。
喉はからからに乾いているし、さっきから全身の小刻みな震えが止まらない。十センチはあるヒールのせいもあって足がうまく上がらない。
気を付けないと転びそうだわ。
そのせいもあって、瑛真の腕に添える指先にも力が入る。
「まさかここまで緊張するとは思わなかった」
心の底からそう思っているのだろう。目を丸くして私を見ている。
「当たり前でしょう? こういうのには慣れていないんだから」
「そうか。でも、俺の妻となればこういう機会も増える。大変かもしれないが、少しずつ慣れてくれるとありがたい」
唇をキュッときつく結んだ。
瑛真は私が抱いた劣等感を払拭するためにこういう機会を与えてくれたのだろうけど、私にしてみれば余計に引け目を感じてしまうだけだ。
めちゃくちゃ浮いていると思うんだけど……。
それらしく振る舞うべきなのだろうけれど、どう頑張ってもそれは無理だ。どうしたって挙動不審になってしまう。