御曹司と婚前同居、はじめます
せめて柏原さんがいてくれたら良かったのに……。

今日は仕事が絡んでいるとはいえプライベートな時間だから柏原さんはいない。

瑛真と二人きりなので助けを求める人間が瑛真以外にいない。と、思っていたのだけれど。


「!?」


会場に入ってすぐに見つけた父親の姿に、危うく大声を張り上げそうになった。


「お父さん!」


駆け寄った私と同様にお父さんもかなり驚いている。


「美和!? どうしてここに?」

「婚約者として同伴してもらったんですよ」


私の代わりに瑛真が答える。


「なるほど。今日はゆかりのある人が多く来ているからな」


納得、とでもいうようにお父さんは顎に手を当てて頷いた。


「ドレスは瑛真くんが用意したのかい? 美和のこういう恰好は子供の頃以来だな」

「そんなことないわよ。友達の結婚式でドレスくらい着ているわ」

「そうか。父さんは見ていないからなあ」


そうまじまじと見られると照れてしまう。
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