御曹司と婚前同居、はじめます
余計に気持ちが沈んだまま会場へ戻ると、瑛真の周りには人だかりができていた。しかも彼を囲んでいるのは女性ばかりである。

彼は彼で社交的な微笑みを湛えていた。

仕方ないわよね……。

仕事とプライベートが入り混じったような場なのだから、彼の振る舞いは正しい。

それにしても、ここで戻ったら飛んで火にいる夏の虫だわ。

なるべく人気の無い一角へと移動して、ウエイターからワイングラスを受け取った。

モテる人なのは聞かなくも分かっていたけれど、できれば目にしたくない光景だった。

あーあ。まさかこんなにもヤキモチを焼くようになってしまうなんて。

酔わないようにと少しずつ香りの良い白ワインを喉に流し込みながら、近場の盛りつけられたデザートへと手を伸ばす。

こんなに美味しいのに殆ど手を付けられていない。

パーティーが終わったら全てが残飯として処分されるのよね。

そんなこと、上流階級の人達は考えたりもしないのだろうな。


「そのケーキ美味しいですか?」


苺のムースケーキを堪能しているところに、見知らぬ男性に声を掛けられた。
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