御曹司と婚前同居、はじめます

「ありがとう。美和は食べないのか？」

「最近食欲がないの」

「……少し痩せたか？　どこか体調が悪いのか？」

「大丈夫よ」


瑛真は何か言いたそうだったけれど、それ以上追求はしてこなかった。

カフェオレを入れたマグカップを持って瑛真の向かいに腰掛ける。


「最近変わったことはなかったか？」

「スーパーの野菜が値上がりしたけど」

「そうか」


瑛真はおかしそうに笑う。


「他には？」

「んー、特には」


創一郎さんからの電話について話そうかとも思ったけれど止めておいた。

必要があれば今夜話せばいいしね。

身支度を手伝って、玄関まで見送りに行く。


「行ってくる」


触れるだけのキスをして瑛真は出て行った。

外で変化が起きていても気付かないわけだわ。家にいる時の瑛真はどこまでも普通なのだから。