御曹司と婚前同居、はじめます
 ◇


翌日、目が覚めると隣の温もりがなくなっていた。

瑛真が私より先に起きることはほとんどない。

胸騒ぎがして飛び込むようにリビングへ入ると、部屋着のままキッチンで立ち尽くしている瑛真がいた。


「おはよう……どうしたの?」

「おはよう。いや、昨日のご飯を食べようと思ったんだが……」

「捨てたわよ」

まだ食中毒が心配な時期だし、それがなくても御曹司の瑛真に一晩経過したご飯なんて食べさせられない。

瑛真は申し訳なさそうに、


「そうか。すまなかった」


額に手をやって、きまりの悪い顔を隠している。


「すぐ出るの? 時間があるなら朝ご飯作るけど」


瑛真の謝罪を素直に受け入れることができず淡々と言う。


「頼む」


頷き返して、慌ただしくパウダールームで顔を洗ってからすぐに準備に取り掛かった。

サンドイッチと濃いめのブラックコーヒーをテーブルへ置く。

経済新聞を読んでいた瑛真はすぐに顔を上げてほころばせた。
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