御曹司と婚前同居、はじめます
「前に、どうして美和のことが好きかと聞いてきたことがあったよな」


急な話題転換に首を傾げる。


「美和は覚えていないかもしれないが、俺は小さい頃苛められていた」


瑛真との思い出はよく覚えている。

美男子だった瑛真は、その美しさゆえに『男らしくない』『女みたいな男』と、同世代の男の子たちに心無い言葉を浴びせられていた。

――ああ、そうだ。

数時間前に創一郎さんに言ったばかりだったので、すぐに思い出した。

瑛真は男らしくなりたいからと、おじさまに野球とサッカーをやりたいと申し出た。けれどおじさまは将来に必要ないものだと言って耳を傾けようとしなかった。

文句一つ言わずそれを受け入れ、学校で同級生に馬鹿にされたあとも、熱心に家でピアノやヴァイオリンを弾いていた。

そんな彼をずっとそばで見ていた。


「美和が大きくなってお喋りが出来るようになった頃にはもう直っていたけど、俺はイギリスで過ごしていたから日本語が下手だったんだ」

「え！？　初耳だよ！？　前に外国育ちかと聞いた時、そんなこと一言も言わなかったじゃない！」

「そうだったか？　まあ、そういうわけで酷く馬鹿にされたものだった」

「子供って時に残酷だよね」


私も転校先で経験しているから痛いほど共感できる。
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