御曹司と婚前同居、はじめます
「いつもこういう食事をとっているの?」


空気を変えようと質問をする。


「いや。俺は薄口だから、こういう味はどうも優しさに欠けて好きじゃない。だからたまに自炊しているけど、今は腕のことがあるからな」

「え!? 自炊するの!?」

「そんなに意外か?」

「意外だよ。男の人が料理すること自体が珍しいのに」


それが御曹司の瑛真がするだなんて。


「治ったら何か披露するよ」

「……ありがとう」


ということは、元カノは出入りしていないのかもしれない。


「うっかりしていた。ワインを出そうと思っていたのに」


瑛真がしまった、という顔をする。

完璧そうに見える人だから、その仕草が少し可愛いらしい。


「美和はワインが好きなんだろう?」

「もしかして私の為に出そうとか考えてる? だとしたらいいからね。まだ仕事のことについて聞きたいこともあるし」

「聞きたいこと?」
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