御曹司と婚前同居、はじめます
「というか一人暮らしなの?」

「家を出て、今は所有しているマンションに一人で暮らしている。家政婦も雇っていない。この男は秘書兼運転手だが所帯持ちなのでそこまで頼めない」


さらりと言われた、所有しているマンションというところに突っ込みたい気持ちを抑えて言う。


「それなら、おばさまに来てもらえば?」

「母は父の世話で手いっぱいだ」


付け入る隙を与えない言い方をされて、それ以上何も言えなくなってしまった。

困ったなぁ。瑛真は譲る気はさらさらない感じだけど、私も無理なものは無理なんだよ。


「私じゃなくてもいいんじゃない? お給料を出せばいくらでも人材は確保出来ると思うんだけど」

「赤の他人に世話をされるのは苦痛だ」

「私も赤の他人ですけど?」

「美和は俺の婚約者だろう? いずれは家族になる人間なのだから、他人ではないだろう」


瑛真は穏やかに微笑んだ。

――は?


「婚約者って?」


瑛真ってこんな顔して冗談を言うんだ。

そう思ったのに、


「俺たちは許婚だろう?」


瑛真は冗談なのか本気なのか分からなくなるようなことを言い出す。
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