御曹司と婚前同居、はじめます
「本来なら俺たちはもうとっくの昔に結婚していたはずなんだ。美和が十六になった時に貰おうと思っていたのに、おじさんが少し待って欲しいと言ってきてね」


何を言っているの? 今どき十六歳で結婚する女が世の中にどれほどいると? しかも私が十六歳なら瑛真は二十歳だ。

望めば欲しいもの全て手に入る人間が、何の因果があってそんなにも若くして結婚をしなければならないのか。

……やっぱり冗談なんだよね?

その考えは続くお父さんの言葉で呆気なく崩される。


「待たせて悪かったね。瀬織家に嫁ぐには、あまりにも堂園(どうぞの)の名が廃れてしまっていたから……」

「だからそんなことは気にしないと何度も言っているのに――でも、よくここまで立て直しましたね。正直もう無理だと思っていましたよ」


堂園家は創業百年以上に渡り化学製品の製造を続けているが、私が物心ついた頃には既に倒産の危機に陥っていた。

それがここ数年の間でお父さんは誰もが驚くほどに業績を上げ、再び堂園化成を一流企業へと押し上げたのだ。
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