人工未来画
「ごちそうさまー」

私も朝食を食べ終え、お皿を片付ける。
するとメイが私の手を止めた。

「私がしますから!」

「いいよ!このくらい出来るから!」

「いえ私の仕事なので!」

そう。今や家庭専属のRが全ての家事を行うのが当たり前。
教科書によれば200年以上前には料理も掃除も全て人間が自らの手でしていたみたいだけど。
現代では全てをRに任せているため人間の家事はほとんどなくなっている。
それこそ必要以上動かないくらい。

メイも人間が楽に過ごせるために作られたRなんだ。
だけど1本足で家事をするメイを見ていると放っておけない。

「いいのいいの!だって私たち友達でしょ?」

「またそんなことを!明理さんは主人で私はただのRですよ」

「Rだからってなにさ!メイは私にとって大切な友人だから!」

「明理さん…ありがとう」

メイはとても嬉しそうに微笑んだ。
Rを友人だと思うなんて、周囲からおかしいと言われるだろう。
人間は主、Rはそれに従うというのがこの世界の一般常識だから。
でも私からしてみれば、人間とRの主従関係の方がおかしく思えるんだ。

「あー、これがテスト中間層の頭かー」

これだから頭悪いんだな。
なんてこと思いながらお皿を洗い終える。
時々家事を手伝っているからなのか、皿洗いや掃除は様になってきた気がする。
もともと体を動かすことが好きっていうこともあるけど。
ま、普通の人間なら家事なんて一切しないんだろうなー。

「明理さん」

「ん?」

のそのそと登校の準備をしていると後ろからメイが声をかけてきた。
さっきまで洗濯物をしていたのに。
さすがR。仕事が早い。

「どうしたの?」

なんだかいつもよりそわそわしている様子のメイ。
そんな珍しい反応に頭上にクエスチョンマークが浮かぶ。

「あ、あの」

やっと心を決めたのか手を出したメイ。
ゆっくりと開かれた手の中には、

「わぁ、きれいなブレスレット!」

赤やオレンジなど明るい色でまとめられたブレスレット。
とてもかわいい。
あれ?でも…

「なんでメイがこれを?」

家庭専属のRは基本的にその家から出ることはできない。
そしてこのブレスレットは私のものではない。
ではどうしてメイがこれを?
Rに搭載されたインターネットで買ったのかな?

「作りました」

「へ?」

「時間がかかってしまいましたが、調味料やお酒の瓶などを加工して作りました」

「えぇぇぇ!!!!」

メイの働きぶりには毎日のように驚かされる。
でも今回はそれを超える驚きだった。
もはやそのブレスレットは通販で売られている商品のようであったから。
まさかこれを作ったなんて…。

「明理さんをイメージして作りました」

メイはにこにこと微笑みながら私の腕にブレスレットをつけた。
私をイメージして…。

「ありがとうメイ!」

「はい!いってらっしゃい明理さん!」

「いってきます!」

それはいつもと変わらず平和な日々。

人間とRの主従関係も平和な日々の1つ。

私たちは気づかなかった。

それは平和ではないということに。
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