意地悪上司は私に夢中!?
山道をどんどん下っていき、林が途切れたところでパッと視界が青くなった。
光が反射して、思わず目を細めた。
…海、だ…
決して南国のような綺麗な海ではない。
だけど日差しに照らされてキラキラ光り、白い波が揺れている。
駐車場から浜辺まではすぐそばだ。
永瀬さんの後ろについて、石段を一歩ずつ降りていった。
砂浜に着地したら、ミュールに砂が入り込んでさらさらと足の裏をくすぐった。
そのミュールを脱ぎ捨て裸足になると、さっきよりも感じる砂の感覚が、やわらかくて気持ちいい。
「…さすがにまだ人はいねえか」
静かな浜辺。
響く波の音。
誰もいない海。
浮かぶのはあの日の光景。
じわじわとよみがえってくるあの日の記憶。
「…どうした?」
涙が滲んでいる私に気づいた永瀬さんが近寄ってきた。
「…ごめんなさい。思い出しちゃって…
元カレが…結婚しようって言ってくれたのが、ちょうどこんな時期の、こんな感じの海辺で…」
目元を拭いながら答えた。
せっかく永瀬さんが連れてきてくれたのに、こんなの失礼だ。
「すみません。湿っぽくなっちゃって。
気にしないでください」
にこりと微笑んでみせたら、不意に海風が遮られた。
遠慮がちに私を包む温もりから、ふわりと甘い柔軟剤の香りがする。
「…ごめん」
消え入りそうな永瀬さんの声。
永瀬さんが謝ることなんか何もないのに。
永瀬さんの胸の中で、私は大きくかぶりを振った。
「ちょっと感傷的になっただけです。
もう本当は平気なんです」
龍二のことは、薄情なくらいにもう思い出すこともずいぶん減っていた。
それは多分、永瀬さんのおかげで…
今は不思議と、永瀬さんにこんなふうに抱きしめられていることに、心が温かくなっていく自分がいる。
Tシャツの胸にコツンと頭を預けた。
永瀬さんの心臓、ドキドキしてる。
多分、私の心臓も。
光が反射して、思わず目を細めた。
…海、だ…
決して南国のような綺麗な海ではない。
だけど日差しに照らされてキラキラ光り、白い波が揺れている。
駐車場から浜辺まではすぐそばだ。
永瀬さんの後ろについて、石段を一歩ずつ降りていった。
砂浜に着地したら、ミュールに砂が入り込んでさらさらと足の裏をくすぐった。
そのミュールを脱ぎ捨て裸足になると、さっきよりも感じる砂の感覚が、やわらかくて気持ちいい。
「…さすがにまだ人はいねえか」
静かな浜辺。
響く波の音。
誰もいない海。
浮かぶのはあの日の光景。
じわじわとよみがえってくるあの日の記憶。
「…どうした?」
涙が滲んでいる私に気づいた永瀬さんが近寄ってきた。
「…ごめんなさい。思い出しちゃって…
元カレが…結婚しようって言ってくれたのが、ちょうどこんな時期の、こんな感じの海辺で…」
目元を拭いながら答えた。
せっかく永瀬さんが連れてきてくれたのに、こんなの失礼だ。
「すみません。湿っぽくなっちゃって。
気にしないでください」
にこりと微笑んでみせたら、不意に海風が遮られた。
遠慮がちに私を包む温もりから、ふわりと甘い柔軟剤の香りがする。
「…ごめん」
消え入りそうな永瀬さんの声。
永瀬さんが謝ることなんか何もないのに。
永瀬さんの胸の中で、私は大きくかぶりを振った。
「ちょっと感傷的になっただけです。
もう本当は平気なんです」
龍二のことは、薄情なくらいにもう思い出すこともずいぶん減っていた。
それは多分、永瀬さんのおかげで…
今は不思議と、永瀬さんにこんなふうに抱きしめられていることに、心が温かくなっていく自分がいる。
Tシャツの胸にコツンと頭を預けた。
永瀬さんの心臓、ドキドキしてる。
多分、私の心臓も。