意地悪上司は私に夢中!?
「…ねえ永瀬さん。
さっきは泣いちゃったけど」

ドキドキしながら上目で永瀬さんを覗き込んだ。

「…私、今日嬉しかったんです。
一緒にいられて、楽しいって思ったんです」

元彼のことを気にしている永瀬さんへのフォローのつもりじゃない。

本当にそう思っているから、どうしても今伝えたいと思った。

…だけど目を見開いた永瀬さんを見て、急に照れくさくなって顔をそらした。

きっと、光の加減で赤くなった顔は見えていないけど。

「あ、あっち、マグロ見れますよ!」

指をさしながら歩き出したら、私の手を永瀬さんの大きな手がぎゅっと捕まえる。

鼓動が跳ねて振り返ったら、永瀬さんはまっすぐ前を見たまま…ちょっとだけ、不自然に姿勢を正したまま、

「これはアリか?」

とガラにもないことを言った。

「…アリです」

そう言って、私は手を握り返した。

< 78 / 123 >

この作品をシェア

pagetop