独り占めしても、いいですか?
準備万端になったところで気がついた。



このボールは…何?



レモンくらいの大きさのボールを手に持って首を傾げる。



ピアノの前に座っている秀ちゃんの方を見ると、



「それ、パフォーマンスに使っていいよ。

ほら、昔やってただろ?ポーンポーンって…」



そ、そういうこと…⁉︎



私はコクッと頷いて、ヴァイオリンを構えた。



やばい…緊張する…



目を瞑っていても下から大勢の人の視線を感じた。



いつもは周りでコソコソ話されるのが嫌だけど、今はこのシーンとした空気が嫌。



シーンとしてる方が、大勢の人から鋭い目で見られている気分。



お腹がモヤモヤする。



喉がおかしい。



ヤダ、吐きたくない。



大丈夫、少しだけ。



音の世界に入ってしまえば何も気にならないんだから。


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