独り占めしても、いいですか?
トーンッ…トーンッとボール遊びでもしているかのようにボールをヴァイオリンの上で弾ませる。



クルッと回ってスカートをふわっとさせてみたり、ヴァイオリンの上でボールを転がしてみたり。



小さい頃にみんなの前で、よくやっていた遊び。



ヴァイオリンを弾きながら、曲に合わせてボールを弾ませる。



回ったり転がしたり、ほんの少しのアクションを入れると、凛達が喜んでくれた。



記憶の中の笑顔に触れると、だんだん楽しくなってきて…



どんどんここではない世界に引き込まれていくみたいな感覚がし始めた。



ここではないどこか。



そう、例えば…



誰も知らない森の中で、動物達と演奏会をしているような…



星空の映った広い海で、私の曲に合わせてイルカがジャンプしているような…



あるいは、雪の降る夜に、少しだけ咲いた桜の木の下で、秀ちゃんと、みんなと、一緒に歌っているような…



そんな、幸せな感覚。



ここでSunlightの歌声が聞こえてきたら素敵なんだけど…



秀ちゃんは歌うつもりは無いみたいだった。



あくまで私の引き立て役として徹してくれてるみたい。


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