独り占めしても、いいですか?
私は弾いている時、みんなのことなんか考えてなくて…



私だけの世界に入っていただけだったのに。



それでも、ここに居る人達は私の曲を聴いて、エールをくれた。



少しだけ、『ごめんなさい』って思ったけど、私の心の中では『ありがとう』の気持ちの方が大きかった。



今は視線が怖いなんて微塵も感じない。



だって、ここで観てくれている人達はみんな、笑顔なんだもん。



初めて『人前に立つのも悪くない』なんて思っちゃった。



優ちゃんは、鳴り止まない拍手とアンコールの声で困り果てている。



もちろん、アンコールなんてやってる時間はないからできない。



秀ちゃんは、私の方を向くと、「よかったよ」と言って褒めてくれた。



少しだけ、みんなの見ている世界に近づけた気がした。


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