独り占めしても、いいですか?
優ちゃんの言葉を聞いて、深呼吸をし、透の手を離してマイクの前に立った。



「えっと…よろしくお願いします…!」



震えそうな声を必死に抑え込んで、小さいけど精一杯声を出す。



今にも消え入りそうだけど、マイクのおかげで、なんとか会場に響いていた。



「えっと、私が歌う曲は…」



………。



その先の言葉が見つからなかった。



そういえば、曲…決めてない…



またまた観客の間でざわつきが起こる。



『お願い、不安にさせないでっ!

頭が痛くなっちゃう!』



と、心の中で叫んだ声も虚しく、すぐに軽い頭痛が起きた。



ダメだ、こんなの気にしてる場合じゃない。



この状況をどうにか…



「俺達が歌う曲は…『Only One』だ」



「キャーーー!」



会場が湧き上がった。



透が助けてくれたことはすぐにわかった。



一瞬でざわつきを歓声に変えてくれたんだもん。



チラッと目を向けて、『ありがとう』と心の中で伝える。


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