独り占めしても、いいですか?
「すみません、少しいいですか?」



突然聞こえた声にびっくりして顔を上げた。



「私こういう者でして…」



そう言いながら差し出されたのは名刺。



受け取ろうとして自分の姿勢が失礼なことに気づく。


慌ててシャキッと立って、両手で名刺を受け取った。



足が崩れそうに震えるのを悟られないよう必死に心を落ち着かせる。



「さくら事務所…?」



芸能事務所の名刺だった。



こういうのも慣れてる。



「すみません、そういったのはお断りしてまして…」



丁寧にお辞儀をした。



「まぁまぁそう言わず、話だけでも聞きませんか?

見たところ保護者の方がいないようですが、大丈夫、ここは保護者の同意がなくても入れます!

親に夢を反対される子供達のための事務所なんです」



キラキラした笑顔を見せたおじさん。



ただの偽善者にしか見えなかった。


< 696 / 721 >

この作品をシェア

pagetop