風と今を抱きしめて……
 数日後…… 

 「本当に申し訳ありません」大輔が、電話口で頭を下げて謝っている。

 何事だろう? 

 皆不安な表情で見合わせた。

 電話を切ると大輔は真矢を呼んだ。


「何かあったのでしょうか?」

 真矢が不安げな顔をする。



「この間送った、EEMブランドの会長のイタリア旅行の見積もり、一桁違っていたらしいい。八十万も少ない」

大輔は深刻な顔で考えている。


「直ぐに新しい見積書を持って謝りに行きます」

 真矢は慌てて見積書を出し直した。


 課長が念入りに確認し、大輔にも社印を促した。

 引出からカバンを取り出し、出かける支度をして飛び出して行った。


「俺も一緒に行く」

 大輔も鞄を持って飛び出した。


 梨花は大輔が真矢を追う姿を、強張った表情で見ていた。

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