風と今を抱きしめて……
EEMブランドは大のお得意様で、年に数回は会社の接待旅行や個人的な旅行まで取引があった。
会長の新井一夫は七十歳近いが非情に厳しい人であり、真矢も最初の契約まで取り付けるのに苦労した。
こんなミスは初めてだ。
真矢を信頼して利用して下さっていたのに、申し訳ない。
なんて謝ればいいのだろうか?
真矢は硬い表情で、EEMブランドの会長室へ向かった。
会長室は広く静かだ。
高級なソファーがあり、その奥のデスクに置いてある置き時計の秒針の音だけが響いていた。
しばらく待っていると、会長の新井が渋い顔で入っていきた。
「申し訳ありませんでした」
真矢が頭を下げる。
「本当に申し訳ありません」
大輔も頭を下げる。
「桁違いの見積書を送るなど、企業としてあってはならん事だ」
荒井は自分の椅子に座り厳しい顔で真矢を見た。
「本当に申し訳ありませんでした」
とにかく真矢は謝るしかなかった。
「しかも、社印も無いし正式な見積書とは言えん物を送ってくるとは」
眉間に皺をよせる。
荒井は立ち上がり、真矢と大輔をソファーへ座るよう促した。
「本来なら、ここで君達を追い返すという演出もあるのだろうが…… 私の話を聞いてもらえるかな?」
荒井は険しい顔を少し緩めると、大輔と真矢の顔を見た。
「もちろんです。ありがとうございます」
真矢は、じっと荒井の目を見た。
「確かに間違った見積書を送るなんて事はあってはならん事だ。しかし、ミスには原因がある訳だ。それをしっかり把握して同じミスの無いようにする事が大事だと思っとる。きっと、確認して置けば良かったチャンスが幾つもあったはずだ」
荒井は一息つき、受話器をとると「コーヒーを持ってきてくれ」と言った。
会長の新井一夫は七十歳近いが非情に厳しい人であり、真矢も最初の契約まで取り付けるのに苦労した。
こんなミスは初めてだ。
真矢を信頼して利用して下さっていたのに、申し訳ない。
なんて謝ればいいのだろうか?
真矢は硬い表情で、EEMブランドの会長室へ向かった。
会長室は広く静かだ。
高級なソファーがあり、その奥のデスクに置いてある置き時計の秒針の音だけが響いていた。
しばらく待っていると、会長の新井が渋い顔で入っていきた。
「申し訳ありませんでした」
真矢が頭を下げる。
「本当に申し訳ありません」
大輔も頭を下げる。
「桁違いの見積書を送るなど、企業としてあってはならん事だ」
荒井は自分の椅子に座り厳しい顔で真矢を見た。
「本当に申し訳ありませんでした」
とにかく真矢は謝るしかなかった。
「しかも、社印も無いし正式な見積書とは言えん物を送ってくるとは」
眉間に皺をよせる。
荒井は立ち上がり、真矢と大輔をソファーへ座るよう促した。
「本来なら、ここで君達を追い返すという演出もあるのだろうが…… 私の話を聞いてもらえるかな?」
荒井は険しい顔を少し緩めると、大輔と真矢の顔を見た。
「もちろんです。ありがとうございます」
真矢は、じっと荒井の目を見た。
「確かに間違った見積書を送るなんて事はあってはならん事だ。しかし、ミスには原因がある訳だ。それをしっかり把握して同じミスの無いようにする事が大事だと思っとる。きっと、確認して置けば良かったチャンスが幾つもあったはずだ」
荒井は一息つき、受話器をとると「コーヒーを持ってきてくれ」と言った。