風と今を抱きしめて……

「社長、いいかげんにして下さい。彼女嫌がっているしゃないですか!」

 大輔は険しい顔で罵倒した。


 今にも一郎を殴りそうだ。



「何言っているのよ!」


 真矢は、慌てて大輔の腕を掴んだ。



「何を怒っとるのだ。くるくる寿司じゃよ。くるくる寿司」


 一郎が、指先をくるくると回す。



「陸と行く約束しとるんだ。何を勘違いしておるのか?」


 一郎は、大輔の気持ちを見透かしたかしたようにニヤリとした。



 ユウは、面白くなってきたとでも言いたそうに、目を輝かせて三人の様子を見ていた。


「いやその、てっきり愛人かと……」


 大輔は困惑して下を向いた。



「そんな訳ないだろう。おまえも来い! 今夜六時にくるくる寿司だ」


 一郎は真矢に手をあげ、ミーティングルームを出て行った。



 真矢も大輔に歩みより、


「そんな訳ないでしょ!」


 大輔を睨みため息をついた。



 続けてユウが大輔に歩みより


「そんな訳ないでしょ! 社長は巨乳が好きなんだから」


 ユウは真矢の胸元を見た。


 大輔もつられて真矢の胸元を見てしまった。

 「しまった」と思ったが遅かった。


「悪かったわね!」

 真矢が、ものすごい目で大輔を睨み出て行った。


 ユウもスキップしながら出て行った。

 大輔は、真矢を怒らせた事を確信した。


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